読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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現在の日本では小学校から高校まで,基本的にすべて学年制で運営されていますが,能力には大きな遺伝的差異があるのですから,これほどナンセンスな制度もないといっていいほどです。それがまかり通っているのは,行動遺伝学の知見を許容できていないからでしょう。教育の目的の1つは知識を習得させることにあるはずですが,残念ながら我が国の学校教育制度は,そのような習得主義に立っていません。だから入学や卒業が形式的,儀式的なものになり,卒業できれば,あるいは入学できればそれで目的は達したことになっています。しかしひとたび習得主義や知的能力に大きな個人差があるのはみなさんもご存知でしょう。まったく能力の違う人たちに,同じ内容を教えたところで知識が定着するはずがありません。
例えば,これが自動車学校だったら,どうでしょう?知識や技能を学んでいない生徒を,形式的に進級,卒用させたら交通事故の件数は間違いなく跳ね上がります。1つひとつの知識をちゃんと覚えたか,技能が身についているかを生徒ごとに確かめ,できていない生徒がいたらできるまで指導する。知識を教えるとはそういうことです。
いまの学校で教えている知識は,自動車の運転と同じくらい,いやそれよりも重要ではないのでしょうか?
安藤寿康 (2016). 日本人の9割が知らない遺伝の真実 SBクリエイティブ pp.189-190