党は耳で得た証拠を拒否するように命じた。それは党の究極的な,最も基本的な命令であった。こぞって自分に反対する力の巨大なこと,党の知識人が討論で自分を簡単に論破できること,反論することはおろか理解さえできそうもない緻密な論理のことを思うだけでも気が滅入ってしまう。にもかかわらず,自分の方が正しいのだ!党こそ間違っていて自分の方が正しいのである。この明白なこと,馬鹿げたことを,真実と共に守り通さなければならないのだ。自明の理は真理である。死守するのだ!実体のある世界は厳として存在し,その法則は不変のなものである。石は固く,水は濡れ,支えのない物体は地球の中心に向かって落下する・オブライエンに語りかけるようなつもりで,またもう1つの重要な原理を述べるような思いで,彼は書きとめたのであった。
自由とは,二足す二が四になると言える自由だ。これが容認されるならば,その他のことはすべて容認される。
ジョージ・オーウェル 新庄哲夫(訳) (1972). 1984年 早川書房 p.104
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