読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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経済モデルは人間の行動に関する誤った認識に基づいてつくられているが,皮肉にも,そうしたモデルがあるおかげで,経済学は最強の社会科学とされている。経済学が最強と言われる理由は2つある。1つ目の理由に議論の余地はない。公共政策への提言においては,経済学者はどの社会科学者よりも強い影響力を持っているからだ。なるほど政策提言は経済学者の独壇場だと言っていい。ごく最近まで,他の社会科学者が政策について議論する場に呼ばれることはめったになく,たとえ呼ばれたところで,親族が集まる場で子どもの席に座らされるような扱いを受けた。
もう1つの理由は,経済学は知性の面でも最強の社会科学だと考えられているからである。経済学には核となる統一理論があり,それ以外のほとんどすべてのことがその理論から導かれる。それが最強とされるゆえんだ。あなたが「経済理論」という言葉を使うと,それが何を意味するのか,周りの人にはわかる。そのような土台を持っている社会科学は他にない。他の社会科学の場合はむしろ,理論の目的が特定の分野に限られる傾向がある。特定の環境下で何が起こるかを説明するためのものだ。実際,経済学者はよく,経済学を物理学になぞらえる。物理学と同じように,経済学ではいくつかの核となる前提が設定され,その前提の下で理論が展開されている。
リチャード・セイラー 遠藤真美(訳) (2016). 行動経済学の逆襲 早川書房 pp.22-23