読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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ポーカーの観察から,メンタル・アカウントの欠陥がもう1つ浮き彫りになった。勝っているプレーヤーは,獲得した賞金を「本物のお金」と扱っているようには見えなかった。この態度は非常によく見られるもので,カジノのギャンブラーの間には「ハウスマネーを使ったギャンブル」という言葉があるほどだ。「ハウス」とはカジノの意味で,カジノで勝って手に入れたお金を自分のお金とは信じられず,カジノのお金でギャンブルをしているように感じてしまうのである。この態度はどのカジノでも観察することができる。夜の早い時間に200ドル勝つと仮定しよう。この人は300ドルを1つのポケットに入れて,そのお金は自分のお金だと考える。そして,200ドル相当のチップは別のポケットに入れる(それどころか,チップをポケットに入れずにそのままテーブルの上に置いて,すぐにでも賭けるかもしれない)。まさに「悪銭身につかず」というやつだ。お金は代替可能であるという経済学の原則をこれほどまでにあからさまに破る例はそうそうない。どちらのポケットに入っているお金も,等しく使われるはずのものなのだから。
リチャード・セイラー 遠藤真美(訳) (2016). 行動経済学の逆襲 早川書房 pp.126