読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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負けが込むと,損を挽回しようとギャンブルに走る傾向は,プロの投資家の行動にも見られる。ミューチュアルファンドの運用担当者は,ファンドの運用成績がS&P500種などの基準指標を下回っていると,当該年度の最後の四半期により大きなリスクをとりにいく。それどころか,会社に10億ドル単位の大損を負わせたごろつきトレーダーの多くは,どうにかして損失を埋め合わせようとして,リスクをどんどん膨らませていった。この行動は,ごろつきトレーダーの視点からは合理的だったのかもしれない。損を取り戻せなければ,職を失うのは当然だが,それだけではすまなくなってしまうこともありえるからだ。しかしもしそうだとしたら,経営陣は,損を出している社員の行動を注意深く見守らなければいけなくなる(そもそもの問題として,経営陣は,ごろつきトレーダーたちが損失を膨らませる前に,もっと目を光らせておくべきだったのだが)。ふだんはきわめてリスク回避的な人であっても,大きな損失を出しそうになっていて,それを取り戻すチャンスがあるときには,とんでもなく大きなリスクを取りにいこうとする。この人間心理はぜひとも覚えておいたほうがいい。みなさんもご用心あれ!
リチャード・セイラー 遠藤真美(訳) (2016). 行動経済学の逆襲 早川書房 pp.130