読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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心理学者が経済学に積極的にかかわろうとしなかった理由はいくつか考えられる。第1に,合理的選択モデルを重要視している人がほとんどいないので,モデルからの逸脱を研究することがそもそもおもしろいと考えられていない。「そんなのサンクコスト効果に決まってるだろ!他に何があるっていうんだ?」となってしまうのだ。第2に,経済学者が取り入れるようになっている心理学は,心理学者にとっては最先端のものとされていない。心理学者が需要供給曲線を自分たちの研究に取り入れ始めても,経済学者がそのアイデアに興奮することはないのと同じだ。そして,心理学の世界では,どういうわけか,「実用的」な問題の研究は伝統的に評価が低い。人が借金をしたり,学校をやめたりする理由を研究していたら,名誉の栄光も手に入れられなくなってしまう。著名な心理学者で,人は何に動かされるかを研究しているロバート・チャルディーニは,例外中の例外なのだ。
リチャード・セイラー 遠藤真美(訳) (2016). 行動経済学の逆襲 早川書房 pp.257