読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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そしてここで指摘したいのが,従来型の学習方法と,目的のある練習,あるいは限界的練習の大きな違いだ。従来型の学習方法はホメオスタシスに抗うことを意図していない。意識的かどうかは別として,従来型の方法は学習は生まれつきの才能を引き出すことであり,コンフォート・ゾーンからそれほど踏み出さなくても特定の技術や能力を身につけることは可能だという前提に立っている。こうした見方に立てば,練習は所与の才能を引き出すためのものであり,それ以上にできることはない,ということになる。
一方,限界的練習の場合,目標は才能を引き出すことだけではなく,才能を創り出すこと,それまでできなかったことをできるようにすることである。それにはホメオスタシスに抗い,自分のコンフォート・ゾーンの外に踏み出し,脳や身体に適応を強いることが必要だ。その一歩を踏み出せば,学習はもはや遺伝的宿命を実現する手段ではなくなる。自らの運命を自らの力で切り拓き,才能を思い通りに創っていく手段となる。
アンダース・エリクソン ロバート・プール 土方奈美(訳) (2016). 超一流になるのは才能か努力か? 文藝春秋 pp.85