読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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心理学に接するとき,多くの人々が操作主義の考え方を放棄するように見えるもう一つの理由は,彼らが人間に関する問題についての本質主義的な答えを求めているということです。本章冒頭の問いを思い出してください。重力の本当の意味とは何か,などです。多くの人は,このような問いが自然現象の根本にある極限の知識を要求するため,物理学の最新の理論でも,この類の問いに答えることはできないと思うでしょう。ここ数世紀の自然科学の進歩について書かれている教養書に慣れ親しんでいる人は,重力が非常に複雑な理論的構成物であり,その概念的および操作的関係は常に変化してきたことを認識しているでしょう。
しかし,重力を知能という言葉に置き換えると,突然信じられないことが起きます。もはやその問いには,重要な意味が染み付いています。その問いは当然で,意味があるように見え,文字どおり究極の答えを切に求めます。心理学者が物理学者と同じ回答,すなわち知能とは,それを測定するための操作と他の構成概念との理論的な関係から意味を導かれた複雑な概念であると答えれば,その心理学者は見くびられ,本当の問題を避けていると非難されるのです。
心理学が直面している問題の一つは,このように他の科学では通常要求されない本質主義的な答えを要求されることです。
キース・E・スタノヴィッチ 金坂弥起(監訳) (2016). 心理学をまじめに考える方法:真実を見抜く批判的思考 誠信書房 pp.65