読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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心理学の世界では,私たちはぎりぎりのきわどい道のりを歩む必要があります。たとえば,心理学のある特定の仮説にまつわる根拠がまだはっきりしない段階で,その仮説を「証明済み」のものと見なしたくなる誘惑に打ち勝たなければなりません。この懐疑的態度は,本書では再三にわたり強調しました。相関関係から因果関係を推断しない注意や,支持証言を根拠として鵜呑みにしない注意が例として挙げられました。反面,不完全な知識や仮説的な結論だからといって,心理学における確かな結論には手が届かないのではないかと,過剰に反応してがっかりするべきでもありません。しかし,心理学が科学たりえないという不合理な主張に誘惑されてもいけません。こうした見地に立つなら,収束根拠の原則が,仮説的な知識を過剰に解釈することへの警鐘とバランスを取り合うものと見なされることになります。心理学研究はおしなべて弱点を持ちつつも,根拠の収束によって,私たちは相当に説得力のある結論に到達できるのです。
キース・E・スタノヴィッチ 金坂弥起(監訳) (2016). 心理学をまじめに考える方法:真実を見抜く批判的思考 誠信書房 pp.165