読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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二重結果論はもっとも正確に定式化できる。この定式化は一般に受け入れられているわけではない。とはいえ通常,二重結果論は四つの構成要素からなっていると見なされている。
・行為はその有害な結果から独立していると考えられ,行為自体は間違っていない。
・行為主体は悪い事態を予見してはいても,手段としてであれ目的としてであれ,善行をなす意図はあるが悪事を働く意図はない。
・悪い結果を招かずに善行をなしとげる方法はない。
・悪い結果は,求められている善行と比較して不釣り合いなほど甚大ではない。
特定の軍事施設を攻撃目標とすることが正当化できるか否かを考えてみると,二重結果論の応用の仕方がわかる。巻き添え被害が予見されるにもかかわらず,ある施設を攻撃することを正当化するには,二重結果論によれば以下の条件が満たされる必要がある。この施設を攻撃すること自体は間違いであってはならない。この施設への攻撃は意図された行為でなければならないが,巻き添え被害は意図されたものであってはならない。この施設への攻撃から帰結する善に対して,巻き添え被害の悪が不釣り合いに大きくてはならない。
デイヴィッド・エモンズ 鬼澤忍(訳) (2015). 太った男を殺しますか?「トロリー問題」が教えてくれること 太田出版 pp.52