読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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道徳哲学を風刺するジョークがある。問題:電球を変えるのに必要な道徳哲学者は何人か? 答え:八人。一人は電球を替えるために,七人はその他のすべての条件を同一に保つために。だがそれは,路面電車のシナリオが役に立つようにきわめて注意深く組み立てられているからにほかならない。
現実の生活はホワイトノイズ,つまり倫理的な雑音であふれている。現実生活はとても複雑なので,道徳的推論の適切な特徴を見きわめるのは難しい。路面電車のシナリオは,基本原則を抽出し,有意義な差異を検知できるように設計されている。そのためには,気を散らすようなゆがんだ音を消し去るしかない。科学的方法との大まかな類似点を考えてみよう。研究室では,たておば光の効果をテストしたい場合,光を変化させる一方でほかの要素はすべて一定に保っておく。同じように,ある特定の特徴が道徳的に妥当かどうかを判断したければ,この一つの変項をさまざまに変化させながら,それ以外の点では同一の二つの事例を想像してみるといい。
デイヴィッド・エモンズ 鬼澤忍(訳) (2015). 太った男を殺しますか?「トロリー問題」が教えてくれること 太田出版 pp.149-150