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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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新村さん

 『広辞苑』(岩波書店)の表紙には,いまでも「新村出編」と掲げられており,編者名がブランド力を持った感がある。初版は1955年。現在は2008年刊行の「第六版」まで版を重ねている。新村出は1967年に死去。彼が関わったのは初版までである。「第二版」「第三版」「第四版」は長男の新村猛を中心に編まれた。猛の長男の新村徹も関わっている。新村猛は1992年,徹のほうは不慮の事故で1984年に死去。『広辞苑』の「第五版」「第六版」において,新村家3代は関わっていない。それでも「新村出編」という名前を残しているのは,新村出が『広辞苑』の基本コンセプトを作ったこと,それを守り続けていくことを広く知らしめるためであろう。これは刑法学者の末弘厳太郎と似ている。なるほど,神童はこうして後世に伝えられていくものなのか。1980年代まで,新聞社や出版社で新人記者が原稿の中でひどくあやふやな言葉を用いると,デスクは「新村さんに聞きなさい」と突っ返すことがあった。「広辞苑で調べろ」という意味である。いまは,ネットで調べれば済んでしまうことが多くなったので,「新村さん」の出番は少なくなりつつある。さびしい話だ。神童さんと読みかえてもよかったのに。



小林哲夫 (2017). 神童は大人になってどうなったのか 太田出版 pp. 107-109


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