読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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いますでに,自己実現的な予言のモデルが3種類出てきた。第1は,一方向のプロセスである。ある集団についてある思い込みが存在し,それに従って集団に接すると,その思い込みの通りの結果になる,というケースだ。第2は,教授陣と学生のように,双方向のプロセスである。アラブ人とユダヤ人,将校と下士官などもそうだ。お互いが相手の行動や態度を予想し,その予想に基づいて互いに行動するケースである(たとえばどちらの側も,相手は好機が来れば予告なしに攻撃を仕掛けてくると考えたら,どちらも好機を逃さず予告なしに攻撃することが自衛上必要だと感じるだろう)。第3は,番犬に警察犬を選ぶ例のように,選択を伴うプロセスである。たとえば宴会の幹事をやりたがるのはおしゃべりで社交的な人だと一般に考えられていたら,幹事をしているだけでおしゃべりで社交的だとみなされる。人前で煙草を吸うのは売春婦だけだと一般に考えられていて,売春婦も含めて女性はみなそのことを知っていたら,女性は人前では喫煙しなくなる。実際にそういう時代があった。
トーマス・シェリング 村井章子(訳) (2016). ミクロ動機とマクロ行動 勁草書房 pp. 131