読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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交通信号もサマータイムも,多くの社会的決定が持つ有無を言わさぬ説得力を備えている。度量衡,ネジのピッチ,10進法貨幣制度,右側通行も,個人がとやかく言えるようなものではない。いや政府にしても,たとえば国民を夏は何時に起床させるといったことは,かんたんには思い通りにはできない。時計技術はサマータイムをじつに容易にした。車のハンドルの位置をそろえ,道路標識を整備して,一斉に右側通行に切り替えるよりはるかに容易である。ネジのピッチが浸透する測度は,貨幣の流通速度よりずっと遅い。家具や設備に使われてきたメートル法に準拠しないネジがすっかり姿を消すまでには,まだあと何年もかかるだろう。
トーマス・シェリング 村井章子(訳) (2016). ミクロ動機とマクロ行動 勁草書房 pp. 138