読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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私たちが社会と呼んでいるものによる調整や誘導の多くは,個人が考える利益とより大きな全体の利益との不一致を解決するための,さまざまな制度的なしくみから成り立っている。その一部は,市場を介して行われる。所有権,契約,損害賠償訴訟,特許および著作権,約束手形,賃貸契約,多種多様な情報・通信システムがそうだ。また一部は,政府を通じて行われる。公共サービスに充当するための税,個人の権利の保護,気象台の運営(市場で取引可能な気象情報が存在しない場合),交通規制,ゴミのポイ捨てを禁じる法律,南行き車線から事故車を撤去する事故処理班,北行き車線で車を誘導する警察官などだ。組合,クラブ,居住区のように,すでにふるいにかけられた集団では,個人ではやる気にならないが集団としてはやった方がよいことを促すインセンティブ・システムを用意したり,規則を定めたりすることが可能だろう。また各自のモラルが市場や政府規制の代わりを果たし,見返りが約束されればいずれはやるかもしれないことを,良心からやらせることもある。
トーマス・シェリング 村井章子(訳) (2016). ミクロ動機とマクロ行動 勁草書房 pp. 145