読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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「カーゴカルト(積荷崇拝)」は,パターンが見出されたもののその隠れた原因について何の根拠もないケースの一例である。たとえば第二次大戦後に南太平洋諸島の原住民が見せた行動がそうだ。彼らはまず日本軍が,のちに連合軍の兵士が,滑走路を作る,行軍する,着陸機を誘導する,決まった様式の服を着るなどしたのを目にした。こうした物珍しい振る舞いと関連付けられたのが,よそ者たちが「カーゴ」と呼ぶ見たこともない物資――缶詰,衣服,車両,銃器,無線機,コカコーラなど――を大量に積んだ巨大な空飛ぶ機械が飛んでくることだった。戦争が終わってよそ者たちが去ると,原住民は自分たちも同じような行動をとれば飛行機がまた飛んでくると考えた。そこで藁とココナッツで滑走路を作り,竹とひもで管制塔を建て,戦時中に出くわした兵士が着ていたような服に身を包んだ。そして木彫りのヘッドホンをかけて椅子に座り,「滑走路」から見よう見まねの着陸信号を送った。彼らはパターン――よそ者があの奇妙な振る舞いをすると豊かな報酬が届く――を見いだし,そこに結び付きがあるのだと,隠れた因果関係があるのだと推論したのだった。だが,推論によって導かれたこの関係は実際には因果関係ではなかった。
デイヴィッド・J・ハンド 松井信彦(訳) (2015). 「偶然」の統計学 早川書房 pp. 30-31