読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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結局,オーストラリアのアナウサギの個体数は,導入から1世紀足らずの1950年には,推定7億5000万頭にまで増加し,ヒツジ1億頭分の草を横取りして各地で作物に大きな被害を引き起こした。
アナウサギ駆除のため,天敵のキツネがイギリスから運んで放された。しかし,すばしこいウサギよりも動きのにぶい有袋類の方を捕食するようになり,数種類の小型カンガルーが絶滅の危機に追いやられた。
次に,ブラジルからウサギのウイルス性伝染病である粘液腫症(ミクソマトーシス)が導入された。この病気はわずか1年以内でオーストラリア全域に広がり,アナウサギの死亡率は99.8%にものぼった。
ところが,ごく一部のウサギがこの病気の免疫を獲得し,この系統が生き残ってウサギの死亡率も7年後には25%以下に低下した。アナウサギの個体数はまたもや急速に復活し,長期間つづけられた撲滅運動も失敗に終わった。依然として牧場の敵ナンバーワンである。
石弘之・石紀美子 (2013). 鉄条網の歴史:自然・人間・戦争を変貌させた負の大発明 洋泉社 pp. 249-250