少子高齢化社会の問題を考えた場合,各国のパフォーマンスの有力な基準となるのは,やはり出生力を維持しつつ,女性労働力がどれだけ有効活用されているのか,であろう。生まれてくる子どもを増やすことで人口構成の歪みを小さくしつつ,増加する高齢者を支えるための税と社会保障を負担する労働者を増やす必用があるからだ。そして出生力と女性労働力参加率という2つの指標から見た場合,比較的よい数値を維持できているのはアメリカに代表される「小さな政府」の国と,スウェーデンに代表される「大きな政府」の国であり,そのどちらでもないドイツ,イタリア,そして日本などは低出力と女性労働の不活用の問題に直面してきた。このことから,私たちは,単純に政府が大きいほうがよい,いや小さいほうがよい,という議論をしていては,物事が先に進まないということを認める必要がある。
筒井淳也 (2015). 仕事と家族 中央公論新社 pp. 128
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