だが,そのようなたぐいのものは,家庭から出るごみの大部分を占める灰や石炭の燃え殻の脇役にすぎず,灰や燃え殻こそがごみのリサイクルを金鉱にする可能性を秘めていた。灰はもともと肥料とされていて,農民にとってはそれなりの価値があり,道路清掃で集めた馬の糞と混ぜればさらに儲けを生んだが,19世紀初頭の大きな市場は,拡大し続ける首都の周辺部に工場を構えるレンガ製造業界だった。灰の細粒はレンガの製造過程で粘土と混ぜられ,「粗粒(ブリーズ)」と呼ばれる大きめの燃え殻――家庭の炉で燃えきらなかった石炭――は燃料として使われた。燃え殻は,広大な露天の敷地に粘土レンガを積み上げる際,レンガとレンガの間に挟んで置かれた。火をつけても,燃え殻のおかげでレンガ同士がくっつくのを防げ,レンガ製造に不可欠となる緩慢な燃焼がもたらされた。ロンドンがかつてない速度で発展するにつれて,建設業界におけるレンガ――すなわち粗粒――の需要もうなぎ上りとなり,塵芥請負業者の利益もそれに比例して増加した。ロンドンは不死鳥であり,自らの灰から蘇ったと冗談を言うお調子者もいた。だが,実のところ,それは二重の意味で正しかった。一般にハードコアは,道路のみならず,新築の家の基礎にも用いられていたからだ。
リー・ジャクソン 寺西のぶ子(訳) (2016). 不潔都市ロンドン:ヴィクトリア朝の都市洗浄化大作戦 河出書房新社 pp.21-22
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