小便所の建設は19世紀初め頃に始まったようだが,正確な日付を確認するのはかなり難しい(それ以前は,小便所を表す英語「urinal」は,医師が患者の尿を集めて調べるのに使用したガラス容器を意味したから)。ある教区民が1814年にホルボーン教区会に送った手紙は,「彼の要請で,彼の家の横に,委員会によって設置された小便所」に触れている。1830年代になると,ホルボーンには,教区会の小便所がいくつかあるだけでなく,小便所の清掃人も週3シリングで雇っていた(以前は週2シリングで貧困者を雇っていたが,あまり熱心に働かなかった)。
そうした初期の小便所は複雑な作りではなかった。通常は,壁に薄い石版や石が取りつけられている程度で,屋外に設置され,男性の下半身を覆い隠す石版が立ててある場合もあった。パブが設置した小便所の多くは排水設備がなく,基本的には,壁続きでつながる建物の状態を維持することだけが目的だった。
リー・ジャクソン 寺西のぶ子(訳) (2016). 不潔都市ロンドン:ヴィクトリア朝の都市洗浄化大作戦 河出書房新社 pp.238
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