IQ得点の上昇という不思議な現象は,ニュージーランドの哲学者,ジェームズ・フリンにちなんで「フリン効果」と呼ばれている。フリン効果を支持する個々のデータは何年も前からそこここに存在したが,この発見の功績はフリンに帰されている。なぜなら,彼は,誰も気づかなかった幅広いパターンに気づいたからである。IQテストは定期的に新しく改変されるが,そのとき,一部の受験者には新版と旧版の両方が与えられる。フリンは,一方のIQテストがもう一方のものより30年ぶん古ければ,両方の版を同じ人が受験した場合,それぞれのIQ値の平均得点を比べると旧版のほうが10点高くなることを見つけた。言いかえると,現在のIQテストで平均点をとる人間は,1世代前の受験者と一緒に受けたら平均よりずっと高い点をとれただろうということであり,したがって,フリン効果を単にIQテストがやさしくなったせいだとすることはできない。
ロバート・アーリック 垂水雄二・阪本芳久(訳) (2007). 怪しい科学の見抜きかた:嘘か本当か気になって仕方ない8つの仮説 草思社 p.120
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