私は,分散効果と聞くとロサンゼルスでの芝の手入れを思い浮かべる。ロサンゼルスは海沿いにある街だが,湿度が低く雨もほとんど降らない。そして,この街には芝を美しい状態に維持する慣習がある。私はそこに住んでいた7年のあいだに,芝の緑を維持するためには,週に1回1時間半の散水よりも,週に3回30分散水するほうが効率的だと学んだ。芝を水浸しにすると,翌日は芝が多少活き活きしたように見えるが,その輝きはすぐに失われる。一方,数日おきに適量の水を与えていれば,隣人に会っても伏し目がちにならずにすむ。水の量は,週に1回のときと同じか,それよりも少なくすむ。分散学習もこれと同じだ。勉強時間を分散させるからといって,勉強時間は増えない。より多くの努力が必要になるわけでもない。にもかかわらず,覚えたことをより長く記憶にとどめておけるようになるのだ。
ベネディクト・キャリー 花塚 恵(訳) (2015). 脳が認める勉強法:「学習の科学」が明かす驚きの真実! ダイヤモンド社 pp. 98
PR