たとえば英国では,中世以来,オックスフォード大とケンブリッジ大が特別な地位にあった。しかし,そのような名門校であればこそ,良好が中世的概念から離脱するのは容易ではなかった。実際,両校の変革は非常に遅く,19世紀半ばになっても,入学者の約三分の1は聖職に就く人々だった。そこで英国の大学改革は,これら両雄の内部変革よりも,その外側に国民的大学を創設することに向けられていく。すでに18世紀,大学の外側に各種の王立アカデミーが創設されたが,これは反面,この大学の古さへの反発の表れでもあった。19世紀になると,流れはアカデミー創設よりも大学創設に向かう。こうして新たに創設されたのが,ユニバーシティ・カレッジ(1826年)とキングス・カレッジ(1829年)を中核とするロンドン大学であったし,これに続いてダラム大学(1832年),マンチェスター大学(1851年),リーズ大学(1884年),ウェールズ大学(1893年)などが創設されていった。
吉見俊哉 (2011). 大学とは何か 岩波書店 pp. 91-92
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