シリコンバレーの新たな投資家の中には,ハリウッドセレブやポップスターなど,ウォール街が「愚かな投資家(ダムマネー)」と呼ぶ人々も含まれている。だがある意味,誰も彼もがダムマネーだ。何がものになり,どの企業が成功するかなど,誰にもわからないのだから。投資家の中には,お金をただ至るところにまき散らしている人もいる。これは,「ばらまいて祈る(スプレー&プレー)」と呼ばれるやり方だ。1発が運よく次のフェイスブックに当たって,残りの不発弾を補ってあまりある利益をもたらしてくれることを祈ろう,ってわけだ。ベンチャー投資家にとって最大の利益は,悪い馬に賭けることじゃない。よい馬に賭けるチャンスを逃すことなのだ。
起業家の多くも,投資家に負けないくらい未熟で経験不足だ。どんな商品やサービスをつくるつもりか自分でもわからぬまま,資金を調達する者もいる。多くは会社経営の経験がなく,働いた経験すらない者もいる。おまけに,こうしたスタートアップ企業の創業者には,どこかいかがわしい人物も多い。かつてIT産業を動かしていたのは,エンジニアとMBA(経営学修士号)取得者だったが,今業界に息づいているのは,道徳心の薄いやり手の若者たちだ。
ダン・ライオンズ 長澤あかね(訳) (2017). スタートアップ・バブル:愚かな投資家と幼稚な起業家 講談社 pp. 50
PR