アメリカでパーティに行けば,マリファナからLSDまで,幅広い違法薬物を目にする——そして勧められる——のは珍しくない。しかし,こうした薬物を乱用する人も,インドのレイブパーティの参加者ほどワイルドとは言えない。アメリカでは,親しげな笑みを浮かべて2,3枚の百ドル札を出せば,8分の1オンス(約3.5グラム)のコカインを買えるかもしれないが,インドのデリでは,同じほどの金額でコブラの毒液を体験することができるのだ。
ある人たちによれば,それは出まわっている薬物のなかで,もっともハイになれるものらしい——だから,値段も高くてしかるべきだ。飲み物に混ぜる,一握りの粉末にした毒液(巷ではK-72あるいはK-76と呼ばれている)は,インドでは他の不法薬物の5倍から10倍の値段で売られている。そして,地元の役人たちの話では,この薬の効能はきわめて強力で,使用者に対して「自分がどこにいるのか,何をしているのかわからないほどハイな状態」をもたらすことができる。
クリスティー・ウィルコックス 垂水雄二(訳) (2017). 毒々生物の奇妙な進化 文藝春秋 pp. 217
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