創造主義に反対で,進化論に賛成という議論になってくると,科学者の多くは頑ななまでに進歩主義を通す。それなのに,現生人類や初期ヒト科,大型類人猿,そしてその他の霊長類までも,何としてでも特別な位置に分類しようとする。被食動物にしてはあまりにも知能が高いという理由からだ。こういった科学者たちがこだわるのは,少なくとも人間(すなわち「狩るヒト」)はまわりの環境を支配しなければならなかった——人間が自分たちを食べにかかってくる「もの言わぬ動物」のなすがままだったはずがない,という点だ。だが自然選択や進化論を信じるのであれば,捕食者と被食者をとらえる動物学の枠組みに基づいて,自分たちの立つ位置を受け入れなければならない。筆者は,霊長類種に対する捕食はまぎれもない事実だと立証してきた。小型で二足歩行をしていたヒト科もほかの霊長類と同じく,まさに食べられる状態にあったのだ。
ドナ・ハート ロバート・W・サスマン 伊藤伸子(訳) (2007). ヒトは食べられて進化した 化学同人 pp. 75
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