ビジネスの世界以外でも,経験を積んだ人は熟練していない人の考えを聞くことによって恩恵をこうむることができる。たとえば,数学の能力の異なる二人の大学生を組ませることで,一人で考えた以上に,どちらの学生も難解な数学の問題でより高い実行能力を見せるようになる。数学に弱い学生が,数学に強い学生に教えてもらえば得するのは当然のことだが,数学に強い学生もペアを組むことで利益を得られるのは興味深い。これは,自分よりわかっていない相手に教えなければならない場合,時分でもその対象をよりよく学ぶ結果になるからだ。勉強のできない学生も,よくできる学生に問題を別の観点から,既成概念にとらわれずに考えるように促すことができる。そこから特殊な問題を新たに直感的な方法で解決するために,しばしば必要となるような創造性が生まれてくる。経験のある人でも,知識のない人の助けを借りることが,ときには重要なのである。
シアン・バイロック 東郷えりか(訳) (2011). なぜ本番でしくじるのか:プレッシャーに強い人と弱い人 河出書房新社 pp. 25-26
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