会場にいる先生たちは感銘を受けたようだった。私の経験では,教育者は一般に共通テストをさほど好んでいない。多くの教師にとって,生徒がこうしたテストでどのくらい良い点数をとるかに自分の仕事がかかっている,となればなおさらだ。それだけの重圧がかかると,先生たちは試験に合わせて教えるようになり,生徒は全般的に限られたことしか学ばなくなり,テストにおける一度の成績がすべての人の成功を測る尺度としてのしかかるようになる。もし自分の教えたクラスの成績が,自らの指導力の尺度だと教師が感じていなければ,あるいはテストの成績が頭のよさを表すかのように生徒が感じていなければ,生徒はかえってテストでよりよい点数をとれるかもしれない。複数の視点から自分自身を考えるように生徒に仕向けさせることや,性別や人種,家庭の年収に関する情報を問う質問をテストの裏側に移動させることも効果がある。こうしたことはいずれも,テストが重視されすぎるのを防ぎ,一度の点数や成績が生徒の知能や自尊心,あるいは成功に向けた潜在能力を反映するという考えを忘れさせるためのものなのである。
シアン・バイロック 東郷えりか(訳) (2011). なぜ本番でしくじるのか:プレッシャーに強い人と弱い人 河出書房新社 pp. 204-205
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