南部プランテーションでは,労働者の数が収穫高に直接結びついていたので,おそらく当時の状況からして,奴隷の数を増やす以外に収穫を伸ばす術はなかったといってよかろう。一家族で経営している農園の数の相当数あったが,中規模以上雨の農園で奴隷を使用していない所は無かった。収入を増やしたいのであれば,賃金を与える必要のない奴隷を買い取る以外に考えられなかったのである。
プランターが奴隷を購入するのに要した金額は,一人当たり500ドルから1800ドルであったが,いったん手中に収めてしまえば,彼らの衣食住をまかなうには年間15ドルから60ドルで済んだのである。農地の拡大によってのみ増収が見込まれるという図式においては,労働力,すなわち奴隷の数を増やすことがプランターたちの主要な関心事であった。であるから,北部においては作物の収益が農機具や土壌の改良,設備投資などにあてられたのに対して,南部ではそのほとんどが奴隷および農地購入の資金として使われた。いったんこのパターンが定着すると,そこから抜け出すことはほとんど不可能であった。
ジェームス・M・バーダマン 森本豊富(訳) (1995). アメリカ南部:大国の内なる異郷 講談社 pp. 23
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