プレップ・スクールを比較対象として見ると,日本の私立小学校の独自性が明らかになる。共通点を挙げれば,総じて学費が高く,家庭環境に恵まれた子弟・子女を対象とした私立の初等教育機関である。相違点を挙げれば,教育理念や経営面で国や地方自治体から完全に独立しているプレップ・スクールと,カリキュラムは学習指導要領に拘束され,都道府県知事の認可を受け,助成を受けることができるなど,国や地方自治体の規制の中で運営される私立小学校。そして,私立の中等学校(パブリック・スクール)に進学するには共通学力テストを受験し,厳しい選抜が行われるプレップ・スクールと,併設上級学校にエスカレーター式に進学できる私立小学校。入学者の選抜においては,縁故主義,個別主義を旨とするプレップ・スクールに対して,集団主義的かつ建前上は縁故を廃した能力主義,競争主義による選抜を行う私立小学校など,両国の私立初等教育機関の対照的な特徴が浮き彫りになる。
小針 誠 (2015). <お受験>の歴史学:選択される私立小学校 選抜される親と子 講談社 pp. 52-53
PR