読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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人が或る刺激の認識に伴って表象する概念を直接的に把握する手法は,それまでにも数多くあった。(1) 自由連想法,(2) 制限連想法,(3) 評定法,等々である。しかし,たとえば「オートバイについてどんなことを思い浮かべますか」と問う自由連想法は,オートバイをめぐるさまざまな先行経験の中から特にそれらが想起されるに至ったという意味での自発性と重要性とをもつ反応が得られる反面,同一対象をめぐる他者の反応結果と比較したり,同一人物における他の対象への反応結果と比較したりする場合の共通項が得がたいといった難点を抱え,たとえば「オートバイについてどんなことを思い浮かべるか,次の中から該当するものを選んでください」と問う制限連想法は,反応結果を相互比較する際の共通項が揃えられる反面,それぞれの選択肢がその者のオートバイに対する反応の可能性をどの程度網羅していたかに関し保証し得ないといった難点,および,選択された反応項目ごとに当人該当性の程度がちぐはぐとなる危険が伴うといった難点を抱え,たとえば「オートバイについての次の諸反応がそれぞれあなたにとってどの程度ぴったりしているか,各反応項目ごとに用意されている‘非常にそう思う’から’全くそう思わない’の7段階尺度上で判断してください」と問う評定法は,反応項目それぞれに対する当人該当性の程度を知り得る反面,反応項目の網羅性に関する保証の点で何ら改善がなされていない難点を抱えていた。SD法が或る対象をめぐる表象内容の測定法として広く普及をみたのは故なきことではない。SD法は,いったん,夥しい数の反応項目を用意したうえで因子分析に拠りそれらを整理し,次に,整理された各群から代表的な反応項目を選びそれぞれへの評定を求める場へ臨む,という2段構えの手続をとることで,“或る対象をめぐる連想反応の主要な範囲を網羅した項目を設け,そのうえで各反応項目についての当人該当性を調べる方法”を確立したのである。
岩下豊彦 (1983). SD法によるイメージの測定 川島書店 pp. 16-17