読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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何とも珍妙な対話である。当事者は真剣かもしれないが,お互いの意志はさっぱり疎通しない。ハリスの申し出を受けた日本側にしても,牛の乳は牛の仔が飲むものとばかり思っていたところ,人間が,しかも人間の大人がそれを飲むと聞いては,開いた口がふさがらない。いわんや,アメリカ政府の代表に,自分で牛乳をしぼってもよいといわれては,まともな返事のしようがない。また,家畜は小舎で飼うと決まっているのに,そこら辺の野山に放し飼いしてもよいか,とたずねられては,びっくり仰天せざるをえない。相手の身になって考えてやろうにも。相手の真意がすこしもわからない。
その後もこのようなことがつづき,ハリスはすっかりまいったらしい。日記を見ると,身体の変調をさかんに訴え,強いられた粗食をなげいている。
鯖田豊之 (1966). 肉食の思想 中央公論社 pp. 23