読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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つまり,「学力差を生まれながらの素質の違いとは見なさず,生得的能力においては決定的ともいえる差異がないという能力観,平等観を基礎としている」のだ。「このように能力=素質決定論を否定する能力=平等主義は,結果として努力主義を広め,『生まれ』によらずにだれにも教育において成功できるチャンスが与えられていることを強調した。……だれでも,努力すれば,教育を通じて成功を得られる。だからこそ,だれにでも同じ教育を与えるように求める。その結果,より多くの人びとが同じ教育の土俵の上で競争を繰り広げることになった。教育における競争を否定する一方で,皮肉にも,能力主義教育を批判する議論が,教育における競争に人びとを先導する役割を果たしたのだ」と,苅谷は,平等主義で反競争的な教育が,逆に,教育における競争を激化させたという皮肉な結果をもたらしたと指摘している。
大竹文雄 (2017). 競争社会の歩き方 中央公論新社 pp. 144