現在,世界では50の細菌の「門」が知られているが,そのうち8から12の門はヒトの体外に見つかる。そのうちの99.9パーセントを占めるのが,バクテロイデス門とフィルミクテス門を含む6つの門である。最も成功した(つまりヒトと暮らすという意味において)細菌が,ヒト・マイクロバイオームの核心を構成する。時間とともに,彼らはヒトの身体に常在し,そこで繁栄するための特性を獲得していった。そうした特性のなかには,酸性環境下でも生存できる,ヒトの食事から栄養を摂取できる,湿潤よりも乾燥を好む,あるいはその反対といったものがある。
すべての細菌を合わせると,一人あたり約三ポンド,つまり脳に匹敵する重量の細菌がヒトに常在し,その種は一万に及ぶ。1000種以上の動物を有する動物園はアメリカにはない。ヒトの身体の内外に棲む目に見えない「細菌動物園」は,より多様で複雑である。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 28-29
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