さらに人は常識のせいで,研究結果はすでに知っていることを確かめただけだ,とつい思いこんでしまう。ぼくはこの前発表をしたとき,こういう“後知恵バイアス”を目の当たりにした。たいていぼくは話をする前に,寝室研究でどんなことが明らかにされたか,予想してみるように聴衆に頼む。すると,これがなかなかできない。寝室では,住人の外見の魅力についてはわかりやすいが,神経質であることは見抜きづらいと予想できる人なんて,ほとんどいない。でもこの発表のときだけは,聴衆に予想してもらわずに結果を話すという失敗をおかした。すると,いつもなら,ほう,とか,へえ,という反応があるのに,みんな意外でもなんでもないような顔をしていた。聞いた事実が理にかなっているとしても,だからといってもともと明らかだったとは言えない,ということを,ぼくはまたしても学んだ。
サム・ゴズリング 篠森ゆりこ(訳) (2008). スヌープ!:あの人の心ののぞき方 講談社 p.7
(Gosling, S. D. (2008). Snoop: What Your Stuff Says About You. New York: Basic Books.)
PR