こうした自己欺瞞はナルシストにとてもよく見られるものだけど,ある程度の自己欺瞞なら多くの人がしている。そのプロセスを理解するために,ポールハス教授は社会的に望ましい反応を役立つ2つのタイプに分けている。
わかりやすいのは印象操作(impression management)というタイプで,これは好ましい(社会的に望ましい)印象を他者に与えるように自己を呈示しようとする意図的な試みをいう。そのために,ポジティブな特性を誇張したり,ネガティブな特性を否定したりする。
2つめのわかりにくいタイプは,自己欺瞞的高揚(self-deceptive enhancement)と呼ばれていて,ポジティブな方向に偏りつつも正直な自己表現をする傾向だ。この特徴が強い人は,言っていることと考えていることに違いがない。自分についてすばらしいことを言っていたら,それは本当にそう信じているのだ。勘違いなのである。そういうわけなので,人が自分のことをポジティブに表現するよう指示されると,印象操作の度合いは急上昇する(印象操作は故意にすることだから)。でも自己欺瞞的高揚の度合いはほとんど変わらない(自己欺瞞的高揚は意識しないものだから)。お察しの通り,ナルシシズムの特性が高い人はたいてい自己欺瞞的高揚の度合いも強いけれど,印象操作については他の人たちと変わらない。
サム・ゴズリング 篠森ゆりこ(訳) (2008). スヌープ!:あの人の心ののぞき方 講談社 p.153
(Gosling, S. D. (2008). Snoop: What Your Stuff Says About You. New York: Basic Books.)
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