ナルシストは魅力的な人たちだ。世間には偏執症とか,過度に感情的で人の注意を引こうとする人たちがたくさんいるけど,そういう極端なパーソナリティを持つ人たちとは違って,ナルシストは権力と責任がある地位ではいい働きをする。コロンビア大学のビジネス・スクールにいるぼくの共同研究者ダニエル・エイムズは,MBAにいる非常に能力の高い学生たちに,さまざまなパーソナリティ・テストを受けさせて,その結果を渡すようにしている。数年前,ある学生がナルシシズム・テストで最高得点をとった。たいていの人はナルシシズムをネガティブにとらえるので,学生がこの結果を見たら打ちのめされるんじゃないかとエイムズは心配した。でもそんな心配はいらなかった。ナルシシズムのレベルが高いせいで,学生はこの悩ましい情報をすぐにポジティブな意味に解釈したのだ。後にエイムズは,その学生が誰かに「ぼくはナルシシズムのテストで一番だったんだ。すべての質問に正しく答えたってことだな」と言っているのを耳にしたそうだ。
ナルシストのもう1つの特徴は,ほめ言葉を際限なくのみこめる能力があることだ。数年前,同僚たちとぼくは,信じがたいほど才能のあるナルシストの共同研究者と会うことになった。そこで,ぼくたちが大げさに言っていることに彼が気づくまで,どれだけほめ言葉を言い続けられるかやってみよう,ということになった。さて,その面会と他に数回あった面会の間に彼が見せた反応は,ぼくたちが予想していたような疑いの念ではなく,うれしそうな謙遜だった。ぼくたちはじっさい「こんなにすばらしい意見を聞いたことは,これまで“一度たりとも”なかったんじゃないかな」なんてことまで言った。でも何を言っても,彼は真に受けていた。
サム・ゴズリング 篠森ゆりこ(訳) (2008). スヌープ!:あの人の心ののぞき方 講談社 pp.154-155.
(Gosling, S. D. (2008). Snoop: What Your Stuff Says About You. New York: Basic Books.)
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