しかし,パートリッジは目眩など気にしてはいられなかった。実験を終えて魚を海に放した後(あるいは食べた後。論文はどちらだったかには触れていない),パートリッジと助手たちは,1万2000コマ以上あるフィルムから魚の相対的な位置を苦労して測定しなくてはならなかったのである。そしてついに,群れをひとまとまりで動かす鍵となる規則を見つけることができた。魚が従っていた規則は次の二つだけだった——正面に見える魚の後を追うこと(それがいれば),そして,横にいる魚と速さをそろえることである。
群れの複雑な動きの根底には,表れ方は様々であっても,常にこの二つの規則があることは今では知られている。これは,魚の群れが形や方向を変えるときに生じる見事なきらめきや,鳥の群れ,昆虫の群れ,人混みなど,あらゆる群れの動きにあてはまる。だが,こうした集団の動きに見られる複雑性は実際にはどうして生じるのだろう?そこにはどんな作用が関与しているのか?この問いの答えを見つけるには,物理学の世界という,別のよりどころに目を向ける必要がある。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 24
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