意識してやっていることは,無意識にやっていることよりも手を加えやすい。だからアイデンティティ・クレイムはごまかしの可能性がとても高い。保守派,リベラル派,フェミニスト,宗教の敬虔な信者に見せるにはどうすればいいかは明らかだ。政治的傾向を示すには,ロナルド・レーガンやケネディ家の誰かみたいな政治の大物をたたえればいい。「おしとやかな女性が偉業を成し遂げることはめったにない」(フェミニストのローレル・サッチャー・ウルリッチの言葉)と書かれたTシャツや,ぼくの車にも貼ってある,キリスト教徒であることを示す魚のステッカーは,明白に伝えたいメッセージを送っている。でも,行動のかすに手を加えるのは難しい。なぜなら,行動のかすは,“意図していない”行動の結果なので,意識でとらえられないのが普通だからだ。たとえば,朝あわてて出かける前に窓のブラインドを上げるとき,たとえブラインドが水平になっていなくても,意識は意図していない結果(水平になっていないブラインド)じゃなくて,作業そのもの(部屋に光を入れて仕事に出かけること)に集中しているから気にとめない。
サム・ゴズリング 篠森ゆりこ(訳) (2008). スヌープ!:あの人の心ののぞき方 講談社 pp.159-160
(Gosling, S. D. (2008). Snoop: What Your Stuff Says About You. New York: Basic Books.)
PR