どうやら私たちの大半には,変わったことや異常なことを,なじみ深くわかりやすい事象で説明する傾向が染みついているようだ。たとえば,近づいてくる竜巻の轟音は,列車が通過するときの音と間違われることが多い。また,竜巻以外には考えられないのに,その音が必ずしも警告にならない場合もある。サイエンスライターのビル・ブライソンは次のような話をしている——アイオワ州にいた祖父が,ある晩,「何億匹ものスズメバチ」が飛んでいるような音で目を覚ました。窓の外を覗いてみたが何も見えなかったのでベッドに戻ったが,翌朝目を覚ますと,自分の車が野外にあるのを見つけて驚いた。竜巻が通過して,車庫をまるごと吹き飛ばしていたのだ。
それほど派手ではないがもっと悲劇的なことに,一酸化中毒なのに,気が遠くなるのを病気のせいだと思い,ガスの出どころから遠ざからないで死んでしまう人がいることもわかっている。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 90-91
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