ある争点を解決するために人々が集まって投票するという考え方は,2500年ほど前,古代ギリシャの都市国家アテネが西洋文明の基礎を築きつつあった頃から見られる。アテネの市民は政治家を選ぶにあたって,2つの見事な考えを採用していた—1つは,立候補した人が誰であれ,その全員の中から籤で選ぶこと。もう1つは,反対投票を行い,そこで多くの反対票を集めた者を追放することだった。
反対投票は,オストラコンと呼ばれる陶器のかけらに,好ましくないと思う政治家の名前を記して行われた。票を投じたい市民は,指定された日にアテネの中心にある広場へ行きオストラコンを手渡し,それが集計される。投票総数が定足数である6000票に達した場合(投票権を持つ市民は約5万人いた),不幸にも最も多く票を集めた政治家は,10年間アテネへの出入りを禁じられることになる——これが陶片追放(オストラシズム)だ。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 127-128
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