ニューカムが思いついた説明は1つだけ——1や2といった小さな数で始まる数字の方が,7や8や9といった大きな数で始まる数字よりも多いのだ。一見するとばかげた仮定に思えたが,ニューカムは数字がこのように分布することを説明できる数学的な根拠があることに気がついた。
その根拠は,何桁にもわたる幅をもつ数の集合があったとき,ランダムに分布するのはその数の対数であって,当の数そのものではないという認識に基づいている。ここから結論へといたる思考過程はかなり難解なものだが,ともかくこのようにしてニューカムは,上1桁の数字に関して,どんな数の集合にでも当てはめることのできる非常に単純な式を導き出した。
Fa = log10(a+1)/a
ただし,Faは上1桁の数字がaとなる頻度を表す。
この式によれば,日常生活で見られる数を広い範囲から集めてリストをつくると,たいていの場合,上1桁の数字は次のような確率で現れることになる。
上1桁の数字 出現確率
1 30.1%
2 17.6%
3 12.5%
4 9.7%
5 7.9%
6 6.7%
7 5.8%
8 5.1%
9 4.6%
分布を確かめてみて,ここから無視できないほど外れていたら,そのリストには人の手が加わっていると断言してよい。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 224-225
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