このアイデアは,今ではラムゼーの定理と呼ばれている。ラムゼーが証明したのは,ある集団が大きくなると,必ずその集団内にパターンが生じるということだった。たとえば,パーティに招かれた6人の客がいるとしよう。この場合,その6人がどのような人物であっても,互いに知り合いの3人か,あるいは互いに全く知らない3人を必ず見つけることができるというのだ。
信じがたい話のように聞こえるかもしれないが,単純な場合については常識を使って簡単に証明することができる。6人のパーティ客から誰か1人を選び,それを仮にAと呼ぶことにしよう。Aは他の5人のうち3人を知っているか,知らないか,いずれかである。
Aが3人を知っていて,その3人のうち2人が互いに知り合いの場合,その2人とAとで知り合い関係の三角形ができる(つまり,互いに知り合いの3人を見つけることができる)。反対に,3人のうち誰も互いに知り合いではない場合,その3人はまったくの他人どうしと考えられる。
Aが5人のうちの3人を知らない場合でも,同じ論理を裏返して当てはめることができる。Aが知らない3人のうち,いずれか2人が互いに知り合いでなければ,Aを含めて互いに知らない関係の三角形ができる(つまり,まったく知らない3人を見つけることができる)。反対に,互いに知り合いがいる場合は,3人の知り合いの輪ができる。
まわりくどく感じるかもしれないが,少なくとも理解はできる。とはいえ,もっと大きい数字を扱う場合は,問題そのものは単純なままであっても,推論の過程はさらに複雑になるので,どんなに優れた数学者でも苦労をすることになる。この問題はグラフ理論(点とそれをつなぐ線で構成されるネットワークについての理論)の一例だ。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 228-229
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