皮質をどう分けるかという問題が初めて持ち上がったのは,19世紀のことだった。それまでは,皮質には脳を覆うという役割しかないと思われていたのだ(「cortex(皮質)」という言葉は,樹皮などの「皮」を意味するラテン語に由来する)。1819年のこと,ドイツの医師フランツ・ヨーゼフ・ガルが「臓器学」を提唱した。ガルが着目したのは,人体の器官はいずれも,独自の機能を持っているということあった。胃は食べ物を消化するためにあり,肺は呼吸をするためにある。だが,脳はひとつの器官と見なすには複雑すぎるし,頭の働きもひとつの機能というには複雑すぎる。そこでガルは,その両方をいくつかに分けることを提案した。とくに彼は皮質の重要性に気づいており,皮質をいくつかの領域に区分し,まとめて「心の諸器官」と呼んだ。
後年,ガルの弟子であるヨハン・シュプルツハイムは「骨相学」という言葉を導入したが,今ではこちらのほうが,ガルが与えた臓器学という言葉よりも普及している。
セバスチャン・スン 青木薫(訳) (2015). コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか 草思社 pp. 43-44
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