どう見てもステレオタイプはよくて不当で,ひどいときには不倶戴天の敵にされることがあまりにも多すぎる。ステレオタイプは婦人から投票権を,アフリカ系アメリカ人から市民権を奪うことに加担した。人類の歴史を通して,くりかえし権利の付与が延期され,特権が濫用され,機会が剥奪されたが,ステレオタイプはそうした行為を保証する役割をした。いちばんよくメディアに取材されるのは,たいてい人種か国籍か性別による不当な決めつけだ。だから,ステレオタイプはいかなるときも悪いものだと多くの人に思われるのも無理はない。
社会心理学の権威ある学術誌を何冊かめくってみれば,ステレオタイプがもっとも大きなテーマの1つになっているのがわかるだろう。人はいつどのようにステレオタイプを使うのか。また,ステレオタイプが正しいことがあるとすれば,それはどんな場合なのか。そんなことを扱う研究が多いと思うかもしれないけれど,実はそうではなくて,ほとんどの研究者はステレオタイプのプロセスの,たった1つの側面だけに焦点をあてている。つまり,他者を認識するときにステレオタイプがどのように干渉してくるかだ。ある代表的な研究によれば,被験者が8桁の数字をくりかえし言うのに気をとられている間は,そのことに気が散っていないときより,人種のステレオタイプを利用する傾向が強かったそうだ。この研究も他の研究も,人はあらゆる視点から考え抜くような時間も余裕もないときは,このようにぱっと浮かんだ決めつけに頼るものだという見方に至っている。
サム・ゴズリング 篠森ゆりこ(訳) (2008). スヌープ!:あの人の心ののぞき方 講談社 pp.194-195
(Gosling, S. D. (2008). Snoop: What Your Stuff Says About You. New York: Basic Books.)
PR