しかしこの説にとっては残念なことに,すべてのニューロンが他のすべてのニューロンと接続しているという仮定は,目も当てられない大間違いなのだ。現実のニューロンはそれとは逆に,《まばら》にしか接続していない。現実に存在するのは,ありうる限りの接続の,ほんの一部にすぎないのである。ひとつのニューロンは,典型的なところで一万個ほどのシナプスを作ると推測されるが,脳の中には1000億個ものニューロンが存在するのだから,接続されるのはごくわずかのニューロンだ。しかしそれも当然といえば当然だろう。シナプスそのものも場所を取るし,シナプスを作るための樹状突起も場所を取る。もしもすべてのニューロンが他のすべてのニューロンと接続していたなら,あなたの脳は異様なほど大きく膨れ上がっていただろう。
セバスチャン・スン 青木薫(訳) (2015). コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか 草思社 pp. 156
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