自閉症の原因に関するこの説が,骨相学的な証拠にもとづき,骨相学的な言葉で語られているのが,ちょっと気がかりだ。前にも述べたように,自閉症者の脳が大きいのは,平均としてそうなっているという統計的な話でしかない。個々の子どもについて,脳の大きさや表面積にもとづいて自閉症の診断を下すことは,不正確きわまりない。ニューロンの接続について「過剰だ」とか「不足だ」などと言うことも,脳のサイズが「大きすぎる」とか「小さすぎる」と言うのと同じく粗雑な骨相学の観点なのである。もしも自閉症がコネクトパシーのために引き起こされるなら,ニューロンの接続の違いは,接続の数ではなく,接続の組織化のされ方のほうにあるはずだ。そうだとすれば,コネクトパシーは現在のテクノロジーでは観察できないということになる。それゆえ,自閉症に関与する神経病理学的特徴も解明できないだろう。
セバスチャン・スン 青木薫(訳) (2015). コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか 草思社 pp. 191-192
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