カール・ピアソンはモンテカルロのルーレットホイール(回転盤)に関する研究を行った二年後,フランシス・ゴールトンという名の紳士と出会った。チャールズ・ダーウィンのいとこであるゴールトンは,科学や冒険,そしてもみあげに対する一族の情熱をダーウィンと共有していた。だがピアソンはほどなく,二人にはいくつか違いがあることに気づいた。
ダーウィンは進化論を練り上げるにあたって,この新分野を整然とまとめることに時間を費やし,骨組みや方向性を幅広く示したので,彼の足跡は今なおはっきりと見て取れる。このようにダーウィンが建築家だとすれば,ゴールトンは探検家だった。ポアンカレとよく似て,ゴールトンも新奇なアイデアを世に公表するだけで満足し,すぐ次のアイデアの探求に向かうのだった。「彼はけっして,誰が後に続いてくるのかを見届けようとはしなかった」とピアソンは語った。「彼は生物学者や人類学者,心理学者,気象学者,経済学者らに新天地を指し示したが,彼らが後に続こうが続くまいが,お構いなしだった」
アダム・クチャルスキー 柴田裕之(訳) (2017). 完全無欠の賭け:科学がギャンブルを征服する 草思社 pp. 80-81
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