ゴールトンは長期にわたって,子の体格に代表されるような結果に対して,さまざまな要因がどのように影響するのかについての考察を重ねた。また,細心の注意を払って,この研究を裏づけるデータを収集した。だが残念なことに,彼の限られた数学的知識では,この貴重な情報を十分に活用できなかった。ピアソンに出会ったときのゴールトンは,ある特定の要因の変化が結果にどれほど影響するのかを正確に計算する方法など,知るべくもなかった。
ゴールトンがまたしても新天地を指し示したのを受けて,数学の厳密さでその地を埋めたのがピアソンだった。二人はほどなく,こうした発想を遺伝の問題に適用してみることにした。二人とも平均への回帰は問題を孕んでいると考え,「優れた」人種的形質が次世代以降に確実に継承されるために,社会は何をするべきかと思案した。ピアソンの見るところでは,「その構成員の大多数を優秀な血筋から確実に集めること」によって,国民は改良可能だった。
アダム・クチャルスキー 柴田裕之(訳) (2017). 完全無欠の賭け:科学がギャンブルを征服する 草思社 pp. 83
PR