就職面接は,キャリアでもっとも重要な30分になることがある。ささいな行動の内容から,雇用主はあなたと契約するか,警備員に敷地内から連れ出させるか,決めなくてはならない。間違った選択が大きな悲しみを生むこともある。いい印象を与える行動が,数々のビジネス調査に取り上げられてきたのも,当然といえば当然だ。そうした調査結果によれば,仕事を手に入れたいなら相手の目を見てにこにこし,何度もうなずいたほうがいいという。こういう人はポジティブな性質を持っている有望な候補者だと受けとられる。でもこの結果には重大な要素が欠けている。相手を見たりにこにこしたりうなずいたりすることが,本当にその仕事に望ましい性質を示しているのか。
入社志願者の審査は,ブルンスウィックのシステムに非常に適している。ギフォードらがおこなったのも,まさにこれだった。研究助手を雇うために34回おこなわれた本物の面接を分析し,それぞれの具体的な行動を記録した。話した時間,面接官の顔をまっすぐ見た時間,笑顔を見せた時間,身振りをまじえた時間,前のめりになった時間,のけぞった時間など。指や髪をいじったかどうか,ペンでコツコツたたいたかどうかも記録した。また年齢,性別,服装のフォーマル度,外見の魅力についても評定した。
それからギフォードはベテランの面接官に面接のビデオテープを見せて,志願者の社交術とやる気にレートをつけるように頼んだ。そしてこの2つに対する評定が,行動の手がかりとどのくらいつながりがあるかを数値にした。その分析結果によると,話す時間が長く,身振りが多く,服装がフォーマな志願者は,社交術でもやる気でも高い評価を受けていた。これらの結果は,それまでの研究結果と一致していた。
しかしギフォードらが,ブルンスウィックのモデルの残り半分である,人の本当の姿(どう評定されたかではない)と行動の手がかりのつながりを調べたところ,予想だにしない結果が出てきた。その分析結果では,話し方や身振りや服装は確かに社交術においては正しい手がかりになるけれども,志願者のやる気に関しては服装のフォーマル度しか参考にならなかった。この結果は,フォーマルな服装は被験者の誠実性を示す手がかりになるという,ボルケナウとリーブラーの研究結果を反映している。またギフォードの分析によれば,面接官は社交術を判断することには長けているが,やる気を判断することにかけては惨憺たるものだったという。やる気を判断するには身ぶりの多さを見るのではなく,どれだけ前に身を乗り出しているか注目するべきだそうだ。志願者は前のめりであればあるほど,やる気があったのだ。スヌーパーにとってブルンスウィックのモデルは,いつ正しい方向に進んでいて,いつ勘違いしそうになっているか知る手段になるので重要だ。
サム・ゴズリング 篠森ゆりこ(訳) (2008). スヌープ!:あの人の心ののぞき方 講談社 pp.213-215
(Gosling, S. D. (2008). Snoop: What Your Stuff Says About You. New York: Basic Books.)
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